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精神科医が教える「記憶に定着させる」読書術 カギとなるのは「アウトプット」と「脳内物質」

 アドレナリンとノルアドレナリンは、不安、恐怖にともなって分泌される脳内物質。事故や災害、近親者やペットの死などに直面したときに分泌されます。PTSD(心的外傷後ストレス障害)という病気があります。虐待や災害など、強烈な恐怖をともなう体験が忘れられなくなり、時にフラッシュバックとしてよみがえる心の病です。その原因は恐怖体験により、アドレナリンとノルアドレナリンが大量に分泌されるため、悲惨な体験が強烈な記憶として残ってしまうからだと脳科学的に説明されています。

 一方で幸福物質と呼ばれるドーパミンは、ワクワクしたときに分泌されます。遠足の前日に眠れないのは、ドーパミンが出てワクワクしすぎているからです。また、目標達成したときなどにも分泌されます。

 快楽物質エンドルフィンは「サイコー」「やったー」と全身で喜びを表現したいような最高の幸福感に包まれたときに分泌されています。スポーツの大会で優勝したり、マラソンの自己記録を更新したとき、思わず「やったー」と叫んでしまう。そんな瞬間に出るのがエンドルフィンです。

 恋愛物質オキシトシンは、愛情やスキンシップに関連して分泌されます。5年前に付き合った彼氏のことがいまだに忘れられないのは、オキシトシンの影響です。

 これらの脳内物質を読書中に分泌させることができれば、本の内容を明確に、長期間記憶できるわけです。いうなれば、脳内物質を利用した「脳内物質読書術」です。

 鈴木光司の『リング』(KADOKAWA)を読んだときには、背筋が凍りました。その本の内容も明確に記憶しています。こんなときには、「恐怖」によってノルアドレナリンが分泌されるので、内容をよく記憶しているのでしょう。

 村上春樹の新刊を読むときには猛烈にワクワクし、幸せの極みといってもいい状態。こうした「最高の幸せ」を感じる瞬間は、エンドルフィンが出ています。自分の大好きな作家の本は、一回しか読んだことがなくても、10年たっても細かいところまで記憶しているはずです。

 ノルアドレナリン、ドーパミン、エンドルフィンなどの記憶力を高める脳内物質を意識的に分泌させることで、本の内容を鮮烈に、そして長期間記憶してしまおう! これが「脳内物質読書術」です。

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