1日でも早くやるべき
生前贈与の2つ目の課税方法は累計2500万円までの贈与がいったん非課税になる「相続時精算課税制度」。60歳以上の親や祖父母が18歳以上の子や孫に行なえる贈与で、相続が発生した時点で贈与分を相続財産に加算して相続税額を計算する仕組みだ。
結局は後に相続税がかかるうえに手続きも煩雑で利用する人は少なかった。しかし暦年贈与とは反対に、こちらは改正によってメリットが広がる。
「来年1月から年110万円の基礎控除が新設されます。最初に税務署に届出さえしておけば、年110万円までの贈与税申告は不要になり、しかも暦年贈与のような持ち戻しもありません」(同前)
年110万円非課税枠の活用という観点では、暦年贈与を凌ぐメリットが生まれることになりそうだ。
こうした改正を受け、まず選択肢となるのが2023年末までの“駆け込み贈与”だという。
「これまで暦年贈与をやってきた人や、今後やるつもりのある人は、年内あと3か月が持ち戻し期間3年で暦年贈与できる最後のチャンス。渡した日から3年を超えれば持ち戻しの対象から外れるので、1日でも早くやったほうがいい」(木下氏)
また、年明け以降は「暦年贈与」か「相続時精算課税制度」かの選択を迫られることになる。
超富裕層ではなく毎年110万円程度の生前贈与をする人であれば、持ち戻しのない相続時精算課税制度のメリットが大きそうだが、「併用」という方法もある。
「一度、相続時精算課税制度を選ぶと暦年贈与はできなくなりますが、『父から子へは相続時精算課税制度、母から子へは暦年贈与』といった併用は可能。暦年贈与の年110万の基礎控除は、受け取る側(子)の非課税枠なので、父と母から暦年贈与を受ける場合、合計110万円までしか非課税にならない。
しかし、違う課税制度で贈与を受ければ父と母の贈与で110万円の控除をダブルで使える。女性のほうが長生きが多いので、母からの贈与を暦年贈与にすると、持ち戻しのリスクを抑えやすいという考え方もできる」(木下氏)