建設費増、会場準備の遅れなど、様々な問題が浮上する大阪・関西万博。経営コンサルタントの大前研一氏は「大阪・関西万博は大失敗して税金の無駄遣いに終わる」と断じる。いったいどんな問題があるのか、大前氏が解説する。
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2025年に開かれる予定の「大阪・関西万博」がピンチだ。同年4月の開幕が1年半後に迫ったのに、海外パビリオンの建設が全く進んでいないのである。
しかも、会場建設費は当初見込んだ1250億円から約1.5倍の1850億円に膨らみ、資材価格や人件費の高騰などでさらなる増額が検討されている。会場となる大阪湾の人工島・夢洲の土壌からは法律上の基準値を超えるヒ素・フッ素・鉛も検出され、用地の計画変更を余儀なくされた。
まさに弱り目に祟り目の切羽詰まった状況である。このため、ついに岸田文雄首相が重い腰を上げて「万博の準備は胸突き八丁の状況にある」「国際社会からの日本への信頼がかかっている」「成功に向けて政府の先頭に立って取り組む」と表明。運営主体の日本国際博覧会協会(万博協会)に財務省や経済産業省などから幹部職員を派遣してテコ入れした。
一方、大阪・関西万博の“当事者”である日本維新の会の馬場伸幸代表(大阪維新の会副代表)は「万博というのは国の行事、国のイベントなので大阪の責任とかそういうことではなしに……」と責任を国に押し付ける“逃げ腰”発言をした。これには耳を疑う。
なぜなら、会場建設費は国、大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担することになっているが、大阪府民・市民以外の国民は単に建設費の3分の1を負担するだけで、万博による経済的な恩恵は何もないからだ。万博誘致を主導したのは、紛れもなく大阪府・市=日本維新の会・大阪維新の会である。万博やオリンピックは、国ではなく都市が主催するのが通例だ。にもかかわらず、予定通りの開幕が危ぶまれる状況になったら「国の行事」「国のイベント」と言うのは、主催自治体の責任逃れも甚だしい。
今は約60の参加国・地域が自前で建てるパビリオン「タイプA」について、万博協会は工期の短いプレハブの建物を同協会が代理で発注して提供し、参加国・地域が建設・内外装デザイン・解体などの費用を負担する「タイプX」という“苦肉の策”を提案して遅れを挽回しようとしている。
だが、9月19日時点でこれを申請した国は1か国、関心を示している国も10か国程度にすぎない。もはや大阪・関西万博を成功させるのは無理と判断すべきだ。