なるあすくさんの歯は、骨の一部が溶けていたものの、幸い歯自体は健康で、虫歯ひとつなかった。
「だから気づかなくて。少し痛いと感じたときに受診すればよかったのですが……」
「虫歯がない」「生活に支障がない」などの理由で歯科健診には行かず、気づかぬうちに歯が抜け落ちるリスクにさらされている人は少なくない。大阪中之島デンタルクリニック院長で歯科医師の山本彰美さんのもとにも、20年以上歯科医院に行かず、歯を失う人が多くいるという。
「なるあすくさんは1本で済みましたが、実際はもっと多くの歯を失うケースが少なくありません。というのも、歯周病は進行に気づきにくい病気で、初期の段階では痛みはなく、どんどん歯を蝕んでいきます。さらに虫歯があると、もっと状態は悪化し、失う歯も当然増えます」(山本さん)
歯周病の影響で肝硬変になることも
しかも、歯周病になると歯を失うだけでは終わらない。なるあすくさんは治療の際に医師から、「ここまで歯周病が進んでしまうと、肝臓も悪くなっているはず」と言われ、内科で検査をしたところ、肝硬変になる寸前だったという。
「まさか歯周病の影響で、肝臓まで悪くなっているなんて予想もしていませんでした」(なるあすくさん)
歯周病は放っておくと肝臓以外に脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病のリスクが高まる。
「歯周病以外でも、歯が悪くなって噛むことができなくなると、消化機能も低下する上、ほかの疾患にかかるリスクが高まります。リスクを回避するためにも、40代以上のかたは歯に痛みや不調がなくても最低、年に1度は歯科健診を受けてください。少なくとも5年以上健診を受けていない人は、何らかの問題があると考え、いますぐ受診をしてください」(山本さん・以下同)