「高齢者」の仲間入りが間近に迫った60才を大きな節目として、老後の備えについて考え直す人は多い。退職金も年金も無視できないが、第一に考えるべきは「保険の取捨選択」。60才以降も入っていたほうがいい保険とは何か。その1つが「介護保険」だ。
もちろん、すべての人が要介護状態になるとは限らないため、基本的には介護費用は貯蓄で備えればいい。だが、介護にかかる費用は、それなりに高額だ。辛口保険評論家の長尾義弘さんは、こう語る。
「介護費用は1人平均580万円かかるといわれており、より手厚い介護を受けたければ1000万円を超えることもあります。貯蓄額と合わせて“どんな介護を受けたいか”で判断してください」
介護保険より保険料が安い「認知症保険」もあるが、これは文字通り認知症にならなければ給付金がおりない。一方、介護保険は多くが認知症にも対応している。
介護以上に貯蓄ではまかなえない損害が出かねないのが「賠償」だ。特に交通事故で人にけがをさせてしまった場合の損害額ははかり知れない。生命保険会社での勤務経験を持つファイナンシャルプランナーの横川由理さんが説明する。
「もし相手が亡くなってしまったら、場合によって賠償額は数億円規模にのぼる恐れもあるため『対人賠償保険』は必須。
ただ、これは事故の相手や同乗している他人のけがは補償されますが、自分や家族までは補償されません。自分のけがや死亡時に実際の損害額を補償してくれる『人身傷害補償保険』も必要です。その分保険料は高くなりますが、自動車保険の保険料はケチってはいけません」(横川さん・以下同)
車を持っていなくても「個人賠償責任保険」は絶対に入っておく必要がある。自転車事故のほか、ペットが人にけがをさせてしまったり、不注意で人のものを壊してしまった場合に補償される。
「年間2000円ほどと比較的安いですが、家族の誰か1人が入っていれば全員が補償されるので、自動車保険や火災保険の特約としてぜひ入っておくべきです。私自身、3億円まで補償されるものに入っています」