“課題先進国”日本が示すべき未来像
まず「超高齢社会」だ。日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は29.1%(2023年)と世界で断トツである。寿命が延び、高齢でも健康な老人が増えることは喜ばしいことだ。しかし、その一方で現役世代の負担は確実に増え続け、それが経済の足枷になる。だが、欧米諸国や中国、韓国などでも高齢化社会は深刻な社会問題になりつつある。その意味で、いわば日本は“課題先進国”なのだ。
あるいは、私が20年前から警鐘を鳴らしてきた「低欲望社会」。これは今も続いていて、消費低迷の主因になっている。日本人(とりわけ物心がついた時から不景気が続いている1980年代生まれ以降の人たち)は、将来が不安で大きな借金を抱えたくないから、いくら金利が下がってもそれに反応しない国民、すなわち金利を下げれば消費や投資が拡大するというケインズ経済学に逆らう国民になったのである。
この問題を指摘した拙著『低欲望社会』の翻訳書が中国で売れている。これまで中国は高欲望社会だったが、最近は若者の間で厳しい競争社会を忌避し、住宅などの高額消費や結婚・出産を諦める「寝そべり主義」「寝そべり族」というライフスタイルが広がっているからだ。今や低欲望社会は多くの国で共通課題になっているのだ。
この課題も、日本の高齢化と密接に結びついている。
日本の個人金融資産は2000兆円以上に達し、その6割超を60歳以上が保有しているが、それを雀の涙ほども利息がつかない金融機関に預けているだけで使わない。しかも、金融庁が「老後30年間で約2000万円が不足する」という誤った試算を公表したため、高齢者の財布の紐はいっそう固くなっている。だから、いっこうに消費が上向かないのである。