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【シン・老人力の時代】「人生を楽しむためにお金を使おう」とする高齢者を日本社会はもっと大切にすべき

高齢者の活力を社会に活かすことが停滞する日本を救う(写真:イメージマート)

高齢者の活力を社会に活かすことが停滞する日本を救う(写真:イメージマート)

 高齢者は「がまんが美徳」などと思わず、元気に出歩いて消費してほしい。日本社会は、人生を楽しむためにお金を使おうとする高齢者をもっと大事にしなくてはいけない──。こうした持論を展開するのは、高齢者専門の精神科医・和田秀樹氏(63歳)だ。和田氏のこうした考えの前提には、聖路加国際病院の日野原重明元理事長が提唱した「新老人」という概念がある。和田氏が新著『シン・老人力』の中で掲げる、新たな老人像について語る。

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 旧世代とは違う元気な高齢者が目立つようになったのは、21世紀に入ったころからでした。これは私の印象だけではなく、こうした新世代の老人に着目した先人たちがいました。

 100歳を越えても現役の医師として活躍した、聖路加国際病院元理事長・日野原重明さんのことを記憶している方は多いと思います。そんな日野原さんは90歳を目前にして「新老人」の概念を提唱し、2000年9月「新老人の会」を立ち上げ、熱心に活動を始めました。

 日本の75歳以上は、国民の寿命が延びたことによって生まれた「新老人」という新たな階層と捉え、若い世代から庇護を受ける立場ではなく、精神的にも身体的にも自立が可能なのだから、社会に役立つ力を発揮してほしいと訴えたのです。

 75歳ともなると、多少は動脈硬化だとか高血圧だとか、老化に伴う慢性病をもっているのが普通です。でも、こうした病気とうまくつきあいながら社会とつながりをもち、なおかついきいきと暮らす健やかな高齢者が、20世紀後半の日本にはたくさん出現し始めたのです。

「新老人」は、世界に先駆けて超高齢社会に入った日本だから登場した階層であり、「いわば老人のエリートである」と日野原さんは述べています。「老」という文字には、本来、敬意がこめられていると、日野原さんは指摘します。

 単に「歳をとっている」という意味ではなく、経験を積んだ人とか学徳がある人を指すというのです。若いころは安い牛丼で「美味い!」と満足していたのに、年齢を重ねていくと、次第に満足できなくなる。あるいは、若手芸人の芸で爆笑していたのに、いつの間にか、レベルの高い本物の芸でなくては笑えなくなります。

 つまり、高齢者は「本物を見抜ける目」をもっているのです。

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