「10人に1人は80歳以上」「65歳以上は総人口の29.1%」――今年の敬老の日に発表された数字は、ますます高齢化が進展している現実を強く印象づけた。2位以下に大差をつける世界断トツの高齢化率となっている日本。だが、世界的経営コンサルタントの大前研一氏は、超高齢社会の問題が山積している“課題先進国”だからこそ、世界に先駆けて経済を活性化させる範を示すべきだという。最新刊『「老後不安」を乗り越える シニアエコノミー』が話題の大前氏が解説する。
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私は2023年2月に上梓した単行本『第4の波』で「『世界3位の経済大国』も風前の灯火」と書いた。
〈1968年にGDP(国内総生産)で当時の西ドイツを抜いて以来、40年以上にわたって「世界2位の経済大国」だった日本は、2010年に中国に追い抜かれて3位となった。続く4位はドイツで、日本とは2兆ドル以上の差があったが、今では数千億ドルに縮まっている。「世界3位」の称号も、遠からず外れてしまうだろう。それどころか、2050年には中国やアメリカの8分の1、世界9位に後退するという予測もある。〉
今では、この予測も甘かったかと反省している。IMF(国際通貨基金)の統計によると、2022年の名目GDP国別ランキングは、1位がアメリカ(約25.5兆ドル)、2位が中国(約18.1兆ドル)、3位が日本(約4.2兆ドル)、4位がドイツ(約4.1兆ドル)、5位がインド(約3.4兆ドル)だ。すでにアメリカの6分の1、中国の4分の1以下である。ドイツとの差はわずか1000億ドル台で、インドとの差も8000億ドル台だ。日本は間もなくドイツに抜かれ、すぐにインドの後塵も拝することになるだろう。この1、2年のうちに世界第5位という位置だ。
バブル崩壊後の「失われた30年」以降も停滞から抜け出せずに衰退する一方の日本だが、裏を返せば、いま日本で起きていることは世界の“先行指標”でもある。