中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「どんだけ人格者で優しいんだ!」“お酒を飲まないのに酒席に付き合ってくれる人”へ、大酒飲みからの止まらない感謝

寝てしまうことも多くてすいません……(写真は中川氏)

寝てしまうことも多くてすいません……(写真は中川氏)

酒を多く飲めるからエラいわけでもなんでもない

 これまで多くの下戸の方に会いましたが、多くの方々は「お酒を飲めない私は情けない」という感覚を抱いているようにも見えました。たとえば、フルーツのカクテルを誰かが頼んだ場合「これだったら私にも飲めるかも。一口いただけますか?」と言ったりします。しかし、それは良くない。体質として無理なんです。ハードリカーであろうが、フルーツのカクテルであろうが、アルコールが入ってる時点であなたには合わない。

 しかし、その方々は「少しでも皆さんに合わせたい」という優しい気持ちを持っているようです。だから、「若干ジュースに近いようなこのアルコールであれば私も飲めるかな?」とトライするも、結局体質的に無理なんです。頭がクルクル回ったり、吐いたりもする。体質的に下戸の方にとってアルコールというものは害となる物質なのです。

 だから下戸の人は無理をしないでいいし、お酒を飲めないことを卑下する必要なんてありません。

 もちろん、お酒を飲んで救われることはあります。どうしようもない哀しみにぶち当たった時、みんなで喜びを分かち合いたい時、お酒があってよかったと思うことはあります。うまく付き合っていければお酒は人生の友になり得る。ただ、一方で、お酒を飲みすぎて仕事上の失敗につながったり、健康を害したりすることもある。浪費だってバカにならない。別に酒を多く飲めるからってエラいわけでもなんでもない。過去に酒で何度も失敗して謝罪を繰り返してきた私が言うんだから、間違いありません。

 昭和の時代は「お前、酒も飲めないのか。それでも男か!」みたいにオッサンが若者を揶揄する風潮もありましたが、これはダサ過ぎる。酒が飲めない体質の人の方がよっぽど世の中のためになっていますし、冷静な判断をこの世にもたらしてくれていると感じます。だからこそ酒飲みは、そうした人たちへの感謝を忘れないようにしたいところです。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

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