振り込め詐欺にやられる
仕事中心の生活を送ってきた人の場合、プライベートの趣味が充実していないケースも多い。
「妻が健在のうちから、妻と違う趣味を持っているかも大事なポイント。要するに“妻以外の人間関係”というリスクヘッジができているかどうかです」(同前)
国立社会保障・人口問題研究所が今年8月に公表した「生活と支え合いに関する調査」によれば、人と会話をする機会が「2週間に1回以下」しかない高齢単身女性は20人に1人程度(5.1%)だが、これを単身男性で見ると、7人に1人(15%)。ほとんど会話をしていない人は、高齢の単身男性に多いのだ。
「そうなってしまうと、当然、認知症リスクも高まる。人との会話のネタになるニュースを見なくなるなど社会への興味が薄れ、当たり前の警戒心も衰える。そんなところに振り込め詐欺の電話などがあると、やはり引っかかりやすい」(同前)
会話の頻度が下がるのは、メールやLINEといった連絡ツールの発達の影響もある。情報のやり取りは便利になった半面、わざわざ会って話をする必要性は薄れてきた。それにより孤立リスクはより深まっている。
そして2つ目の困難は、健康管理ができなくなる、という問題だ。前出・小谷氏がいう。
「妻が元気なうちは、妻の手料理を出されるままに食べる“ブロイラー状態”になっている男性が多いと思います。ひとりになると自由な選択ができるはずですが、長年、何を食べたいかを主体的に考えたことがないことが問題になってきます」
栄養のバランスを考える意識が欠落しているため、好きなものだけを食べ続けて高カロリーの食事に偏り、コンビニでビールと酒の肴を買って晩酌──そんな生活では酒量も増え、自分で自分の健康を害していくスパイラルを止められない。いわゆる「セルフネグレクト」に陥りかねない。