2007年にデビューして以来、フィアット500のエンジン搭載モデルは進化を続けながら、世界中で人気となっている。燃費のよさやコンパクトさという高い実用性だけでなく、なにより古さを感じさせない愛らしいデザインに魅力を感じる人は少なくないようだ。
そして2020年、その500シリーズに追加されたのが、フィアット500e(以下500e)。基本デザインはそのままに、BEV(バッテリーEV)としての新しい走りと実用性を備えて登場した。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。今回は、自動車ライターの佐藤篤司氏がフィアット「500e」に乗車し、レポートする。
「カッコ可愛い」BEVのデザイン的な魅力に注目
500eのルーツをたどれば、1936年に登場した2人乗りのマイクロカー、初代フィアット500(以下、500)まで遡ることになります。そのコロッとしたデザインと、ちょこまかと駆け回る様子から「トッポリーノ(イタリア語のハツカネズミ)」という愛称で親しまれ、人気となった初代。映画『ローマの休日』にも登場するなど、知名度は世界レベルでした。そして1957年に登場した2代目モデルで500の名は盤石となります。日本で言えばアニメの『ルパン3世』の愛車として知られていますし、ヨーロッパではイタリア以外でも頻繁に見かけるほどの人気で、フィアットの屋台骨を支える1台と言えるほど支持されていたのです。
その2代目の威光を引き継ぐ形で、2007年に登場したのが3代目の現行モデルです。世界で愛された先代のデザインを現代風に解釈して仕上げたボディをまとっていました。日本では「ネオレトロ」などと呼ばれている手法で、BMWのニューMINIやフォルクスワーゲンのニュービートルなどと同じ考え方です。旧モデルのデザイン上の魅力を引き継ぎつつ、新たなファッション要素を前身に散りばめながら発売された現行500は、コンパクトカーとして大きな成功を収めています。その愛らしいデザインは現在でも古さを感じさせることなく、その上でハード面のアップデートを遂げていますから、15年あまりも人気を維持していることは当然なのかもしれません。
そこに、電動化という時代性をまとって2020年にラインナップへ加わった(日本上陸は2022年)のが、BEVモデルの500e。人によっては「コイツは500の4代目だ」という人もいます。確かに全体のフォルムはそのままですが、パワートレインがBEVであることや、デザインの細部でかなりのブラッシュアップが施され、新しさや近未来感がしっかりとありますから、そう言われることも理解できます。
なかでもデザイン的に魅力的なのは半開きの目で睨んでいるような表情のフロントマスク。これが大型のクルマなら、少々凶暴にも見えるのですが、500eの印象は「やんちゃ」です。幼稚園児がいたずらっぽく睨んでいる、最初に印象はまさにそれ。見ているだけで、こちらが笑顔になるようなデザインは飽きが来ません。