注意したいのが、妻が先立った場合だ。その際は、遺言書の大幅な見直しを迫られることになる。
配偶者は、相続した遺産が1億6000万円(ないし法定相続分)以下なら相続税がゼロになる配偶者控除が適用される。そのため、遺言書では妻への相続分が多くなるように記述しているケースが多い。妻の死後、その内容を放置していると、“争族”のタネになる。
「たとえば『妻に不動産を相続させる』とした記述を放置したまま自分が亡くなると、妻の相続分は無効になり、宙に浮いてしまう。残された子供が不動産をどう分けるかで争ったり、相続税の納税資金問題が生じたりする恐れがある」
また遺言書の書き直しには所定のルールがある点にも気をつけたい。詳しいやり方は上掲の図に示したが、書き直す部分が多い場合は「作り直し」の検討も必要だ。
「自筆証書遺言の書き直しが多いと、見栄えが悪くなり、“後から誰かが手を加えたのではないか”と疑いをもたれることがあります。妻が先に亡くなって相続人が変更になり、書き直す部分が多くなるなら、内容に齟齬が出るのを避けるためにも作り直すのが望ましいでしょう。再度作成するのが面倒だという人は、遺言書に『妻が先に亡くなった場合は、代わりに○○に相続させる』と万が一に備えた記載方法にしておく手段もあります」
適切な遺言書が“争族”を防ぐことにつながる。
※週刊ポスト2023年10月27日・11月3日号