ある日突然、連れ合いに先立たれて「ひとり」に──そうなる可能性は、夫にも、妻にもある。だからこそ夫婦で元気なうちから「必要な備え」と「やってはいけないこと」を知る必要がある。
自分が死んだ後、ひとり残された配偶者が困らないような遺言書を作成することも大切だ。たとえば、妻のためを思ってより多くの財産を遺そうと、「不動産はすべて妻に」などと記載する夫もいるだろう。しかし、それがかえってトラブルにつながることもある。ファイナンシャルプランナーで行政書士の柘植輝氏が語る。
「一定の相続人に対して遺言によっても奪うことのできない最低限保障された遺産取得分である『遺留分』という制度があります。もし妻以外の法定相続人の相続額が遺留分に満たない場合、それを巡って裁判になることもある。妻を困らせないためにも相続人の数をきちんと把握したうえで、金額を記載することが必要です」(以下、「 」内コメントは柘植氏)
遺言書の存在や内容を生前に妻に伝えることを考える人も多いだろう。だが、あえて「伝えない」ほうが妻のためになることもある。
「遺言書の存在を知った妻が『何て書いてあるの?』と不安になり、夫婦関係がギクシャクしてしまうことがある。よく『保管場所を妻に教えたほうがいいですか』と相談されますが、迷うくらいなら相談しないのも手です。とはいえ遺言書は死亡後に見つからなければ効力が発揮されません。保管場所を伝えないなら、自身の死亡時に遺言書の存在が相続人に通知される法務局の『自筆証書遺言書保管制度』を利用するのがよいでしょう」