定年後、社会的なつながりが減るなかで悩むのが「友人付き合い」だ。現役時代は社内だけでなく、名刺を交換した相手とも年賀状などの付き合いをしていたという人は多いだろう。精神科医の保坂隆氏(保坂サイコオンコロジー・クリニック院長)は「定年後は人間関係の整理をしましょう」と説く。
「高齢になると、知り合いがいればいるほど良いわけではありません。年賀状の付き合いなら、両親のどちらかが亡くなるなど欠礼状を出すタイミングで『年の始めの挨拶は遠慮します』と書き添えて、徐々に減らす契機にすることができます」(以下「 」内のコメントは保坂医師)
形式的な付き合いを減らす代わりに、保坂医師が取り組むべきとするのが「ソーシャルサポート」の構築だ。これは、特に妻を亡くした後の男性にとって、大事になるという。
「ソーシャルサポートは医学的な用語で、自分がひとりで生きていくために欠かせない社会的な人間関係を指します」
なかでも保坂医師は「情緒的ソーシャルサポート」「手段的ソーシャルサポート」「情報的ソーシャルサポート」の3種類を担ってくれる人が、それぞれ3人ずつは必要だと言う。
「情緒的とは癒してくれる相手のことです。電話やSNSでやりとりをするような関係でもよく、距離が離れていてもいい。
手段的は通院や買い物など日常的な困りごとを手助けしてくれる相手のこと。情報的は地域のイベントなど必要な情報を提供してくれる存在です」
この3種類のソーシャルサポートを、生前は妻ひとりに頼っている男性が多い。
「3つの役割を担ってくれていた奥さんを亡くした後は、代わりになるソーシャルサポートが必要です。できれば夫婦が健在なうちに意図的にプラスしなければならないと思います」