大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

そごう・西武をどう再建するか? 大前研一氏が「答えは簡単明瞭。ヨドバシカメラにすべて任せるべき」と説く理由

ヨドバシカメラはそごう・西武にとって最高の“助っ人”か(イラスト/井川泰年)

ヨドバシカメラはそごう・西武にとって最高の“助っ人”か(イラスト/井川泰年)

 経営コンサルタントの大前研一氏は「もし自分が○○だったら」と仮定し、企業の経営課題の解決策を考えることがビジネススキル向上に繋がると考える。今回は「そごう・西武」について。大前氏ならそごう・西武をどう立て直すか?

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 前号(『週刊ポスト』2023年10月20日号)では、私が学長を務めている「ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学」の「RTOCS(Real Time Online Case Study)」という授業を紹介した。「もし自分が○○だったら」と仮定し、社長などリーダーの立場から今後の具体的な打ち手を1週間で考えるケーススタディだ。例として、いま世間の関心が高いビッグモーターの問題解決策を提案した(*)。

【*マネーポストWEB記事〈大前研一流思考法「もしもビッグモーターの問題解決を任されたらどうするか」〉参照】

 今回は引き続きRTOCSの方法で、やはり最近話題の「そごう・西武」の問題解決策を考えてみたい。

 周知の通り、セブン&アイ・ホールディングスは9月1日、傘下の百貨店「そごう・西武」を米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに売却した。それに対し、雇用維持を求める「そごう・西武」の労働組合は8月末、大手百貨店では61年ぶりのストライキを敢行した。この問題をどう見るか。

 まず、セブン&アイは、なぜこんな状況になるまで衰退産業の百貨店を保有していたのか? 今後はコンビニ事業とスーパー事業に専念すると言っているが、ならば、なぜそもそも「そごう・西武」を買収したのか。井阪隆一社長をはじめ経営陣は内紛に明け暮れ、結局、「そごう・西武」を立て直せなかった。要は経営力のなさを露呈したわけだ。

 次に豊島区長。高野之夫前区長と同じく後継者の高際みゆき現区長も西武池袋本店の低層部・主要部に家電量販店のヨドバシカメラが入ることに反対している。

 だが、それは区長が口出しする話ではない。高際区長は「西武池袋本店というのは“文化を基軸としたまちづくり”の大きな鍵を握る場所」「百貨店の体を成さなくなったら、池袋の街の賑わいや人流にも大きな影響がある」などと懸念を示しているが、そこまで言うなら、豊島区が西武池袋本店を経営してはどうか。

 街の賑わいや人の流れというものは、人々がどんな店や施設に魅力を感じるかによって大きく変化する。高際区長は明治通りに面した1階の目立つ場所に高級ブランド店がないと百貨店の体を成さず、そこにヨドバシカメラが出店したら人の流れが変わって街が寂れると考えているようだが、それは大間違いだ(理由は後述する)。

 そもそも池袋の現在の“文化”は「アニメと漫画」であり、高級ブランドはそぐわないと思う。かてて加えて、すでに池袋駅周辺にはビックカメラが5店舗もあるのだから、ヨドバシカメラが文句を言われる筋合いもないだろう。

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