アルバイトやパート勤務の労働時間は企業ごとに異なる。昨今では「従業員の着替え時間」を労働時間に含める企業が増えてきた。はたして、従業員の労働時間はどう決まるのか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
食品加工工場を営んでいます。先日、家具量販店のイケアが、従業員の制服の着替え時間も労働時間と考え、賃金にプラスすることにしたそうです。うちの工場は生ものを扱うので、パートさんの着替えには時間を要します。となると、うちでも着替えや消毒にかかる時間を賃金に足さなければいけませんか。
【回答】
時給制のパートさんの給料は、労働時間により決まります。この「労働時間」とは何かですが、例えば、時間外労働を禁じた条文では制限時間を超えて「労働させてはならない」とあるように、労働させている時間ということになります。
そう考えると、次に「労働」とは何かとなるのですが、法の解釈では身体を動かしていなくても、使用者の指揮命令のもとにあれば、労働に当たります。従って、作業着の脱着が会社の指揮命令下にあるかが問題になります。
以前に最高裁は「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる」との基準のもと、工場の労働について【1】工場の門と更衣室との間の移動時間【2】更衣室で作業服を着脱する時間【3】終業後の洗面や入浴の時間が労働時間になるかが問題になった事案で、【1】は使用者の指揮監督下にない、【3】は終業後、洗面や入浴をしないと帰宅できないような作業ではないから、使用者の指揮命令下にあるとは評価できず、労働時間ではないと判断しました。