ラーメン店の倒産増加が、注目を集めている。東京商工リサーチによれば、2023年1~8月の全国のラーメン店の倒産件数は28件で、前年同期の3.5倍なった。新型コロナウイルス感染症の流行が始まって売り上げが大きく落ち込んだ2019年の年41件を上回るペースだという。【飲食店の原価・第1回/ラーメン編・前編】
経済紙記者が解説する。
「コロナ禍の影響はだいぶ限定的になってきたはずですが、今年に入ってラーメン店の倒産が増えているのは、ロシアのウクライナ侵攻による小麦の値上がりをはじめとした食材費の上昇に加え、原油価格上昇による電気・ガスなどの光熱費の高騰による急激なコストアップが原因です。これに拍車をかけたのが人件費。最低賃金が引き上げられ、チェーン店は店舗を絞り込んでいる。家族経営でない店は軒並み厳しいのではないか」
都内に3店舗を展開するあるラーメン店の店長は「この業界に古くからある『1000円の壁』という問題がある」と説明する。
「ここ数年、付加価値をつけることでラーメンの価格は上がる傾向にあるが、それでもまだB級グルメのイメージが強く、若者を中心にリピーター客が多いため、ほとんどの店では価格は1000円でつり銭がある800~900円が限界。新規参入が多い業界だけに1000円を超えると客足が一気に減るのではないかという不安があるのです」
たとえ1000円超えのメニューでも薄利
「1000円の壁」を意識するため、値上げが難しく、経営を圧迫していくのだという。前出のラーメン店店長が続ける。
「実際、期間限定メニューとして1000円を超えるラーメンを何度か企画しましたが、定着するまでに至らなかった。もちろんブランド力や付加価値を高めて1000円を超えるラーメンを提供している店もあるが、そういう店は常連客を増やそうとするのではなく、高級食材を使ったラーメンを非日常的に楽しもうとする層をターゲットにしている。
とはいえ、昔からラーメンは回転率がよく薄利多売の商品と言われてきた。1000円超えのメニューを出しても、材料費もかかるため薄利であることには変わりないと思う」