定年退職をしてからも仕事を続ける人は多い。会社員人生の後半に資格を取得し、それを定年後の人生に活かしている人もいる──。
銀行マンとして長くキャリアを積んできた金子芳正さん(61)は、顧客対象が個人のリテール事業に従事する中で、「相続」の問題に興味を持つようになったと言う。
相続アドバイザーの資格を取ったものの…
金子さんはこう話す。
「富裕層の方はとくにそうですが、資産をいかに上手に相続させるか、というのは家族全体の人生設計についてとても大切なことです。将来的にはその分野で仕事をしていきたいと思っていたのですが……」
40代半ばからいくつかの支店の部長や支店長などを歴任。ポストオフに備え、腰を据えて相続の分野の仕事に取り組もうと思い、53歳でFP1級を取得。54歳のポストオフの1年後に相続アドバイザーの資格を取得した。ところが会社の辞令は相続とは関係のない「人事部への異動」だった。
「相続アドバイザーの資格まで取ったのだから、とかなりアピールしたのですが、配属先が変わることはありませんでした。でも、やってみると人事の仕事もけっこう面白くて(笑)」(金子さん)
折しもバブルの大量雇用世代がポストオフとなる時期だった。そうした人たちに対するキャリア研修を任されることになった。
「人事評価などは支店長時代にやっていたので、問題なくこなせたのですが、キャリア研修となると、わからないこともあります」(金子さん)