【2】7ヶ月前の安値との比較
先ほど述べたとおり、ラッセル2000が7ヶ月ぶりの安値を記録しました。では、7ヶ月前の3月、何が起こったのでしょうか? 多くの方が覚えているかもしれませんが、それは「シリコンバレーショック」として知られています。
アメリカの中堅投資銀行であるシリコンバレーバンクの経営破綻をきっかけに、複数の銀行の経営破綻などが相次ぎ、米国の信用システムに不安が広まり、米国株式市場が一時的な混乱状態に陥りました。この時、S&P500は直近の高値から9.21%下落しましたが、ラッセル2000は▲15.55%という、より大きな下落となりました。
ラッセル2000の指数構成は、ニューヨーク証券取引所やNASDAQなどに上場している銘柄の中で、時価総額が上位1001位から3000位までの銘柄で構成されており、シリコンバレーショックで影響が大きかった地方銀行の株式が多く含まれていたことが一因とされています。
今回、10月に入って7ヶ月ぶりの安値を更新したことで、再び類似のリスクが発生している可能性を考慮する必要がありそうです。
【3】主要な銀行決算と地方銀行への影響
10月23日時点で、アメリカの主要な銀行・証券株であるモルガン・スタンレー、ゴールドマンサックス、バンク・オブ・アメリカが決算発表を行っています。業績は非常にポジティブな内容でしたが、株価は下落傾向にあり、その背後には気になる要因が見受けられます。
具体的には、商業用不動産ローン(CRE)の貸倒引当金が増加していることです。高金利と在宅勤務増加により、オフィス用物件の空室が増え、借り手のデフォルトが増加し、減損処理や貸倒引当金の影響で収益や財務が悪化しています。
商業用不動産ローンは、大手銀行ではなく地方銀行が多く抱えており、シティグループの調査によれば、地方銀行または中小銀行が商業用不動産ローンの70%を占めています。
この情報を踏まえると、地方銀行中心に株価が下落していることや、ラッセル2000が年初来安値を更新している今の状況は、地方銀行の経営破綻に留まらず、それを超える大きなリスク要因が潜んでいる可能性があることも考えられます
もちろん、ラッセル2000は銀行株以外にもさまざまな業種の株が含まれており、これが唯一の要因ではないことは考慮しなければなりません。それでも、年初来安値を更新するほど株価が下落しているわけですから、今後の個別株への投資には慎重さが求められるでしょう。