好きなアイドルやスポーツ選手など実在する人物のほか、二次元キャラクターや鉄道、特定の建造物、動物など、好きな対象を応援する活動全般を指す「推し活」。相手が歌手や芸能人であれば、楽曲などの作品を購入したり、出演する舞台を観覧するなどして、その活動を応援したりする。最近では、動画投稿サイトの配信者に直接金銭が渡せる「投げ銭」機能があることから、自宅に居ながらにして多様な推し活が可能となった。そうしたなか、推し活の投げ銭をめぐって、家族間での対立を引き起こすこともあるようだ。新刊『誰にだって言い分があります』が話題のフリーライターの吉田みく氏がレポートする。
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埼玉県在住のパート主婦・ヒロコさん(仮名、50歳)は、夫と高校生の子を持つ3人家族。最近、自宅でひとりの時間によく視聴する配信動画があるという。
「素人の方が自身の貧困ぶりをアピールする動画チャンネルにハマっています。様々な事情があって収入が思うように稼げない……そんな状況下で一生懸命に生活をしている配信者さんを見ると勇気を貰えるんです。
お金持ちがリッチな生活ぶりを見せるチャンネルを見ていた時期もありましたが、総額1000万円以上を使う企画とか高級ブランド品紹介とか、あまりにも私の生活とはかけ離れたものばかりで、いつからか心から楽しめなくなっていきました」(ヒロコさん、以下同)
ヒロコさんが視聴し、時には投げ銭をして応援しているという動画配信者は、40代半ばの男性・Aさん。チャンネル登録者数は2万人弱の“貧困系YouTuber”だという。動画では、ゴミ屋敷に近い状態の部屋を舞台に、1食50円以下の食事を作ったり、お金のかからないレジャーを紹介するなどのコンテンツを配信しているそうだ。
動画内の情報によると、Aさんの収入はアルバイト代と動画配信の収益で月10万〜15万円ほど。いつもギリギリの生活を送っているという。そんな様子を面白おかしく配信動画にしているところに、ヒロコさんは魅力を感じているそうだ。
「ギリギリの生活で大変なはずなのに、いつも笑っていてポジティブなんです。私は夫婦共働きではありますが、子供の学費のことを考えると決して余裕はなく常にイライラしている状態。Aさんの動画を見ると励まされるし、私だけが大変じゃないと気づかされます。ギリギリの生活もポジティブな気持ちで受け止められるAさんのような心の広さが欲しいです」