「部長が2人いる」と揶揄されて…
そんなバブル組も、ポストオフを迎える時代に突入した。それまで支店長や部長を務めていた人間が役職を失い、ヒラ社員と同等の立場で働くことになる。大手金融機関関係者の男性・Bさんは、そうした状況下での職場環境についてこう話す。
「昨日まで部下だった後輩の下で仕事をする人も少なくありません。ただ、役職にあぐらをかいて、指示は出すが手は動かさないといった習慣が染みついた元部長や元支店長はタチが悪い。顧客に提示する資料も作ったことがなく、パワーポイントなんか触ったこともない。そんな人が実際にいます。職場に口さがない後輩がいたりすると、“粗大ゴミだ”と陰口をたたかれたりしていますね」
キャリアコンサルタントの資格を持つ別の男性・Cさんは、ポストオフ後の金融マンたちのキャリア研修も行なっている経験からこう話す。
「まずは、置かれた立場をわかってもらうことから始めます。バブル入社組は先輩たちの好待遇を見てきた時代でもあります。それをそのまま自分に当てはめるようとする人がいるけど、現実は厳しい」
かつての大手金融マンは、ポストオフ後に関係会社や子会社に役員待遇で出向するなど、“花道”が用意されていた。ところが失われた30年で、そうした花道は雲散霧消してしまった。Cさんが続ける。
「ダブついた人材を引き受けてくれる場所がないのです。ポストオフ後は現場に出て、それぞれの案件を担当し、成果を出さなければならない。ところが、昨日まで部長などの肩書きがあったために、職場であれこれ指示を出したがる人もいます。そうすると“うちの部署には部長が2人いる”なんて揶揄されることになってしまう。動かすのは口ではなく手でなくてはいけない。手を動かし、足を使って数字を稼ぐ。ある意味初心に返ってもらうのが、キャリア研修の目的でもあるのです」