登録する場合、しない場合のメリット・デメリットは?
K記者:私自身はまだ免税事業者なのですが、現状維持のままでいると、今後どうなりますか?
小島さん:免税事業者でいるメリットは、消費税の申告・納税の義務がなく、経理負担も少ない点。逆に、デメリットは売り上げ減少です。Kさんの場合、取引先が課税事業者の場合はインボイスが必要なので、免税事業者のままだと仕入税額控除が使えず、取引先は税負担が増えることになります。また、取引先がインボイス発行事業者との取引を優先すれば仕事は減り、消費税上乗せ分が納税によりなくなるので、売り上げが確実に減少します。
K記者:なるほど。現実は厳しいですね。のほほんと免税事業者として生き残る方法ってないんでしょうか?
小島さん:免税事業者のままでいるには、こうした点を慎重に考え、唯一無二のスキルや自分にしかできない作品など強みを作る、取引先とよく話し合い交渉するなど、自ら手立てを考えることが大事になります。
K記者:逆に、登録して課税事業者になるメリット・デメリットって何ですか?
小島さん:Kさんが課税事業者になれば、消費税を請求でき、それまで益税(*)を取っていなかった場合は、売り上げが10%アップします。これが利点です。デメリットは納税義務を負い、経理作業が煩雑になること。ですが、たとえば副業をしているOLさんの場合は、インボイス登録済みの方が発注会社側に選んでもらいやすくなるというメリットはありそうです。
【*益税とは、事業者が消費者や顧客から預かった税を、国庫に納入せず事業者の利益としたもの】
(第3回に続く。第1回から読む)
【プロフィール】
税理士・小島孝子さん/ミライコンサル代表取締役。2010年に小島孝子税理士事務所を設立。著書に『ちいさな会社とフリーランスの人のための どうする?消費税インボイス』(税務経理協会)など。
取材・文/北武司 イラスト/田中斉
※女性セブン2023年11月9日号