2022年の流行語大賞に「インボイス制度」がノミネートされてからはや1年。よくわからない!という声が多い中、10月1日から始まったこの制度、正式名称は「適格請求書等保存方式」といい、消費税を正しく納めるための制度だと政府はうたうが、その実、金銭面でも事務手続きの面でも個人事業主やフリーランスの負担ばかりが増えている気がする。どうすればいいのか? このモヤモヤを解決すべく、現時点では免税事業者のフリーランスのK記者が、素朴な疑問を税理士の小島孝子さんにぶつけた。【全5回の第2回。第1回から読む】
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身近なライターやカメラマンにインボイス登録をどうするか聞いてみると、「しばらく様子見」との答えが大半。某制作会社の社長からは「インボイス登録をしないなら、消費税を負担する分、値下げさせてもらう」と宣言された。
できれば現状維持の免税事業者でいたいが、それでは取引先に迷惑がかかる。やがて仕事が減少し、ゆくゆくは廃業のリスクも……と想像すると、登録して課税事業者になる方がましと思えるが、消費税を払えるのか不安は募る。
迷える私の印象に残ったのが、東京都個人タクシー協同組合の取材で聞いた話だ。
「登録をしようがしまいが、われわれにはデメリットしかないのが現実。負担を覚悟し、よりよい環境を求めて苦渋の選択をするしかないのです」(副理事長・水野智文さん)
インボイスの発行事業者になるべきか、ならざるべきか──。検討する際に知っておきたいポイントを、改めて小島さんに聞いた。
登録はいますぐした方がいいのか?
K記者:インボイス制度はすでにスタートしていますが、登録するなら、なるべく早めにした方がいいんですか?
小島さん:実際に必要になってからでもいいと思います。申請書の提出日から15日後の日付で登録できますので、単純に必要となる日に向けて約1か月以上のアドバンテージが持てれば、あとは好きなところの日付で、税務署に申請書を提出すればいいのです。
K記者:ということは、様子を見ながらでも大丈夫なんですね?
小島さん:はい。たとえば発注側から、「今月中にインボイスに対応してもらわないと困ります」と言われた場合でも、月の前半に申請書を出しておけば、月末に切る請求書には間に合います。
K記者:私のように、様子見の人って多いんですか?
小島さん:多いと思います。実際に制度が始まって、どうしても登録しないとダメそうだったら、そのときにやりますといった人も結構います。最初はわからないことが多いですからね。