会社員の場合、経費精算に関係あるの?
小島さん:サラリーマンは「インボイスは自分に関係ない」と思いがちですが、経費精算の社内ルールが変わる可能性があります。
K記者:へ~、それは意外な影響。仕事上必要な経費は、普通は精算できるのに、どうしてまた?
小島さん:インボイスによって、免税事業者の領収書の場合、たとえば高額の接待費に含まれる消費税分は仕入税額控除ができなくなるので、会社の負担が増えます。接待費などの精算では「インボイス発行事業者の店の領収書でないと認められません」と突っ返される可能性が大なので、接待に使う店や、免税事業者の多い個人タクシー(*)を使う場合は、選び方に注意した方がいいでしょう。
【*個人タクシーは、インボイス対応の領収書が出ないと思われがちだが、東京都個人タクシー協同組合の組合員の場合は99%が課税事業者転換済み】
K記者:経費の精算をする場合も、これからはインボイス対応の領収書を用意するのが無難なんですね~。
インボイス制度の余波で値上がりするものってあるの?
K記者:領収書のほかにもインボイス制度の影響を受ける、思わぬ余波ってありますか?
小島さん:話題になっている余波には、電気料金の値上げが挙げられますね。
K記者:え~~っ!! ただでさえ電気料金高騰で家計は火の車なのに、さらに値上がりはきつい。インボイス制度がなぜ影響するの?
小島さん:いまの電力には“売電”でまかなっている部分があり、個人宅が屋根にソーラーパネルをつけている場合、電力会社が買取で代金を払いますが、個人宅ではインボイスはなく、登録も難しい。電力会社はその分の消費税負担で買取コストが増え、「電気料金を値上げします」と東京電力はアナウンスしています。インボイスが物価にもたらす影響って、ほかにもいろいろありそうですね。
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
税理士・小島孝子さん/ミライコンサル代表取締役。2010年に小島孝子税理士事務所を設立。著書に『ちいさな会社とフリーランスの人のための どうする?消費税インボイス』(税務経理協会)など。
取材・文/北武司 イラスト/田中斉
※女性セブン2023年11月9日号