減税期間も1年に限定した。岸田首相の従兄弟で財務官僚出身の宮沢洋一・自民党税調会長は官邸で首相と会談した後、所得税減税について「1年というのが極めて常識的だろう」と発言して縛りをかけた。
すると岸田首相は、テレビ東京の番組(10月24日放送『ワールドビジネスサテライト』)で、財務省の振り付け通りの発言をした。
所得税減税の期間は来年1年限りの臨時減税という見方を示し、規模についても、「2年分の所得税などの増収分をお返しするのが最もわかりやすい」と語った。
2022年度の所得税収は2020年度比で約3.3兆円増えている。
減税の立案に関わる官邸スタッフは、「所得税減税の対象者は納税者とその扶養家族で約8600万人。そこから逆算して財務省が1人4万円減税(約3.3兆円)という金額をはじき出した」(政府関係者)と説明しているが、3.3兆円というのは2022年度分だけの増収額である。減税額には2021年度の所得税増収分(約2.2兆円)が含まれていない。首相に「2年分をお返しする」と言わせながら、財務省はこっそり1年分を削ったのである。
税収増21兆円を還元するなら「1人24万円」減税を
本来国民に還元すべき国と地方の税収増はそんなものではない。
国の税収は2020年度から3年連続で過去最高を更新し、所得税、消費税、法人税などを合わせた2年分の税収増は約16.5兆円、2年連続過去最高の地方税の2年分の増収(同約5.1兆円)を合わせると軽く21兆円を超える。この税収増を全額、納税者とその扶養家族に還元すれば、減税額は「1人24万円」になる計算だ。