大金を盗んでおきながら、被害者に小銭だけ返して“感謝しろ”とふてぶてしく言い放つ──岸田文雄・首相が突如言い出した1人4万円の所得税・住民税の「定額減税」は、そんな悪辣で姑息な“詐欺”である。それで支持が得られると思っているのだから、あまりに有権者をバカにしている。
岸田首相の魂胆は見え透いている。「たった4万円で票が買えると思ったら大間違いです」。そう語るのは経済ジャーナリストの荻原博子氏である。
「年4万円なんて月にすれば3333円、1日109円ですよ。物価高騰で、スーパーでは大幅値上げされた商品が売れない。庶民は買えないんです。この程度の減税で物価高騰に耐えられるわけがない。選挙をにらんだ“見せ金”だとすぐわかる」
自民党内でもこの減税は評判が悪い。反主流派の閣僚経験者は「こんなものは経済対策ではない」と突き放した言い方をする。
「物価高騰対策なら全部給付金にすれば年内にも配り始めることが可能だ。しかし、減税だと実施できるのはサラリーマンには早くても来年の夏、自営業者は再来年の確定申告の後になってしまう。総理がこんな即効性のない減税にこだわる理由は、『増税メガネ』と呼ばれたくないからだ」
役人の振り付け通り
減税の規模は小さく、実施は遅らせる──この絵図面を描いたのが財務省だ。
「今こそ、成長の成果である税収増等を国民に適切に還元する」
9月25日の会見で威勢よくそうブチ上げた岸田首相だったが、長崎と高知・徳島の衆参補選で苦戦、敗北した翌日、10月23日の所信表明演説では言い方を変えた。
「税収の増収分の一部を公正かつ適正に還元し、物価高による国民のご負担を緩和いたします」
還元を税収増の「一部」に限定したのである。
「所信表明演説に『一部』という文言を盛り込ませたのは財務省だ。財務官僚たちは『増税クソメガネ』と呼ばれたくない一心で減税にこだわる岸田総理を陰で『減税クソメガネ』と呼んでおり、減税の規模を小さくするために総理を巧妙に誘導していった」(自民党議員)