「4万円減税」(3.3兆円)は還元どころか、ケチりにケチった金額だとわかる。国民の財布から大金をせしめておいて、それを少しばかり戻して「適切に還元した」と胸を張る姿は“盗っ人猛々しい”と言うほかない。前出の荻原氏が指摘する。
「この2年間、物価高騰で家計の負担はものすごく重くなっている。同じ食品を買っても、値段が上がっているから消費税を多く払わされる。実質賃金は下がっているのに、名目上給料が増えているから所得税も社会保険料も多く取られる。可処分所得はどんどん目減りしている。税収増は国民から搾り取ったものです。
さらに、政府はこの10月から“増税”しています。インボイスの導入で、年商1000万円以下の自営業者の多くは消費税を納めなければならない状況に追い込まれた。明らかに消費税のインボイス増税です。岸田首相は国会の代表質問に『インボイス制度を廃止する考えはない』と明言したが、その口で所得税減税をアピールするなど欺瞞としか言いようがない」
負担増の予定が目白押し
そのうえ、この先には所得税、法人税、たばこ税を引き上げる「防衛増税」や「異次元の少子化対策」の財源に充てるための社会保険料引き上げなどの国民負担増のスケジュールが目白押しだ。
国民にすれば、そうした負担増だけで1年限りの定額減税などすぐに吹っ飛ぶのに、岸田首相は「税収増の一部還元」とは言っても、「防衛増税をやめる」とは言わない。政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。
「岸田首相は支持率低下で10月の衆参補選に大苦戦し、年内解散は難しい情勢だ。そうなると、次のチャンスは自民党総裁選前の来年夏になる。物価高騰対策名目の所得税減税の実施時期をわざわざ来年夏にするのは、減税の効果が出てくるタイミングを考えているからでしょう。財務省が1年限りの減税をあっさり容認したのも、これまでの増税でお釣りが来るうえに、選挙後のさらなる増税を首相が約束したからだと見て間違いない」
“とりあえず4万円くらい減税してやれば票は買える”──そんな岸田首相と財務省による「増税の企み」を本誌・週刊ポストは徹底的に追及していく。
※週刊ポスト2023年11月10日号