すでに陳腐化している「知識」に固執した学習指導要領を金科玉条のごとく墨守し、それに従う学校を「一条校」として補助金を出している文科省は「1億総玉砕」に突き進んで日本を破滅させた戦時中の大本営のようなものである。すなわち文科省こそがAIに取って代わられるべき存在なのだから「AI教育省」に看板を掛け替え、教育を根本的に改革する新たな文科省を創設すべきだろう。
人間の脳には左脳と右脳がある。左脳は言語・計算力・分析力・記憶などの論理的思考を司り、右脳は創造性・ひらめき・芸術性・イメージなどの直観的思考を司る。左脳の知識を教えるだけの教育はAI中心にシステム化し、学習方法もAIでサポートする。一方、AIには真似できない右脳を鍛える教育は、AI学習とは別に“新・文科省”が担ったり、親やボランティアの社会人が教えたりすればよい。両脳を総合的に使って「構想する力」は人間にしかないので、この訓練をすることこそ、今後の教育者に求められているものである。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『「老後不安」を乗り越える シニアエコノミー』など著書多数。
※週刊ポスト2023年11月10日号