「ChatGPT」など生成AIの登場で、学校教育のあり方も見直しが求められている。AIが台頭する時代で日本の教育はどうあるべきか? 経営コンサルタントの大前研一氏が、自身の手がけるビジネス・ブレークスルー大学の例と共に「今後の教育者に求められるもの」を提言する。
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来年1月に実施される「大学入学共通テスト」の出願受付が終了した。
大学入試センターのホームページによると、共通テストは「知識の理解の質を問う問題や、思考力、判断力、表現力等を発揮して解くことが求められる問題」を重視しているそうだ。「知識偏重」から脱するため、以前のセンター試験より多くの教科・科目の問題でページや文章量が増え、長い文章や図・資料などから必要な情報を読み取って解を見つける力が問われるという。
だが、問題文が長かったり、図・資料が入っていたりすれば、思考力や判断力や表現力がつくのか? 受験生は学校でも塾でも模擬試験でも大量の長文を読み、多くの図・資料に目を凝らしているわけだが、果たして、その時間と労力が必要なのか? 甚だ疑問である。
文科省がやっている大学入試改革は小手先のマイナーチェンジに過ぎず、これでは「思考力、判断力、表現力」などつくわけがない。
さらに「ChatGPT」をはじめとする生成AI(人工知能)の登場で「答えがある」領域の学びは否定される時代になった。「答えがある」領域はAIが人間より圧倒的に優れているからで、分野によってはAIの能力が人間の能力を超える「シンギュラリティ」がすでに到来している。いまや世界中の知識は、AIという巨大な“知の塊”に集約されつつあるのだ。