そごう・西武のストライキは、百貨店では61年ぶりの実施として注目を集めた。こうしたストライキが起きた場合、ビルのテナント売り上げは補償されるのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
雑貨店を営んでいます。動向が気になるのは、西武デパートのストライキ。問題はデパート内に店を構えているテナントです。店を開けられず、予定に組んでいた1日の売り上げもナシで、巻き添えを食らった状態でしょう。この場合、テナントはどこに1日分の補償を求めればよいのですか。
【回答】
デパートとテナントとの間で、どのような契約を締結しているか不明のため、その点を無視して考えれば、以下のようになります。
デパートは、テナントに店内の特定の場所を有償で使わせ、営業させています。約束した店舗の使用をさせない場合には、デパート側の債務不履行になります。この債務不履行により、テナントに営業機会の損失という損害が発生します。債務不履行をし、契約相手に損害が発生すれば、債務者にはその賠償をする義務が生じます。
しかし、民法では債務者が賠償責任を負わない例外として「その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときはこの限りでない」と規定されています。そして、労働者のストライキは、労働者の権利として労働組合が決めることであり、雇用主であっても、デパートが左右できないことなのです。
そのため、ストライキにより、テナントの店舗使用が不可の場合は、損害賠償責任を負うことはありません。もし、そうでないとすれば、経営者はストライキによる損害賠償責任を恐れ、労働者の要求に応じざるを得なくなってしまいます。もっとも、これは通常の場合であって、仮に経営者側が非常識な対応をし、ストライキを招いた場合には別かもしれません。