支店・ATM統廃合、手数料値上げなど銀行の「顧客軽視」に厳しい目が向けられるなか、銀行業界による金融商品の販売をめぐる問題が注目を集めている。
今年6月、複雑でリスクの高い金融商品・仕組み債の販売をめぐり、千葉銀行とちばぎん証券などが金融庁から業務改善命令を受けた。
仕組み債とは、複数の金融派生商品(デリバティブ)を組み込んだ商品で、その複雑さゆえに経験豊富な機関投資家向けとされるが、同行は傘下の証券会社に顧客を紹介し、投資経験に乏しい人にも仕組み債を勧めていたことが問題視された。金融商品トラブルをめぐる訴訟を多く手がける、富士桜法律事務所の堀内岳・弁護士が語る。
「預金額の多い投資初心者で、『信頼する銀行の紹介だから大丈夫だろう』と十分に理解しないまま購入する人が少なくありません。商品説明資料を見ると、『発行体:世界銀行』『信用格付:AAA』といった顧客を安心させる情報が目立つ位置にあり、リスクを示す『参照為替:トルコリラ・円為替ルート』などの重要な情報が目立たない場所に書かれている例が多く見受けられます」
堀内氏が担当した訴訟に、30年以上かけて1億円以上の預金を積み上げた50代男性の事例がある。銀行員に紹介された証券会社から1億円分の仕組み債を購入し、運用開始から1年で7割の損失が出てしまった──。当然ながら元本割れリスクのある投資は自己責任で判断すべきものだが、リスクを十分に説明されなかったと主張する人が少なくないのも現実だ。