近年、増加しているのが「墓じまい」。厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、墓じまいを行なった人はここ10年で1.5倍に増加した。2011年度の墓じまい件数は約7万7000件だったが、21年度は約11万9000件に達した。その墓じまいの延長線上にあるのが「仏壇」をめぐる問題だ。
「遠く離れた故郷の『墓じまい』を終えると、次は実家の仏間にある立派な仏壇をどうするか……という話になって『仏壇じまい』を進められる方が多いです」
そう話すのは、大阪市にある柳谷観音大阪別院泰聖寺の純空壮宏住職だ。泰聖寺は将来的な檀家制度の行き詰まりなどを見据え、宗派を問わず多様なニーズに応える“大阪の駆け込み寺”を標榜している。10月某日、純空住職に話を聞くと「本日も2件の仏壇じまいをしてきました」と話す。
「1件はマンションの一室に住んでいた方が亡くなり、お子さんがいないため親戚の方からの仏壇じまいをしてほしいという依頼でした。魂抜きをしたうえで、ご本尊の仏像や掛け軸、位牌を持ち帰ってお焚き上げします。先祖の戒名が書かれた過去帳は残しておくように伝えました。仏壇に供えられていることの多い過去帳は、その内容を記録としてパソコンなどに残しておくのがよいと思います。
もう1件は所有者の亡くなった建物を壊す産廃業者からの依頼でした。部屋に立派な仏壇が残されていて、もちろん建物ごと取り壊すこともできたのですが、工事の無事を祈る意味も込めてちゃんと供養したいというお話でした」
いずれもお布施は3万円で、「そのくらいが相場だと思います」と純空住職は言う。ただし、仏壇じまいにあたっては、墓じまいと相似形とも言える注意点があるようだ。
「仏壇じまいを菩提寺に相談すると、同じ魂抜きの供養でも“檀家として最後の供養”という位置づけになるために、10万~20万円といった離檀料込みの値段に上積みされるケースがあります。菩提寺に頼んだところ高かったので、当寺院にいらしたという方もいます。そもそも菩提寺とは疎遠になっており、供養を頼みにくいという場合もある」(純空住職)