コロナ禍に起こった悲劇
2020年、世界中で猛威を振るった新型コロナウイルスは、中華東東の経営も直撃した。店長の池田穂乃花さんが当時を振り返る。
「もちろん東東だけではなく、日本中の飲食店が苦労していたはずです。国からの要請で営業時間の短縮、アルコールの提供までも禁止されたのは本当に辛かったです。ただそれ以上に大変だったのが創業者の祖父に癌が見つかったことでした」
コロナ禍で周りの店が営業を休止するなか、初代店主の帯刀武次郎さんは、「うちが閉めたら地域の人たちが外食する場がなくなってしまう」と厨房に立ち続けた。そうした頑張りが仇となり、2020年7月に緊急入院すると、余命3か月を宣告されたという。
「子供の頃から夏休みなどにはお店の手伝いをするためによく出入りしていたため、このお店には愛着があるし、どうしても無くなってほしくない。祖父が余命3か月って言われたときには、本当にショックでした」(穂乃花さん)
コロナ禍で思うように営業できない日々が続いていた2020年9月、武次郎さんが帰らぬ人となる。
そこで立ち上がったのが穂乃花さんと、親友のジェンジェンさんだった。
「私とジェンジェンは幼い頃からずっと友達で、2人ともよく店に出入りして、調理やホールの仕事を手伝っていました。だから何かできるんじゃないかって考えたんです」(穂乃花さん)
2人が考えたのはSNSの活用だった。同世代に向けたメガ盛りメニューなどを考案し、TikTokにアップした。これがきっかけとなり、若者を中心に注目を集めるようになった。
「祖父が亡くなってから両親と祖母は店をたたむことを考えていたようです。でも、闘病中には血を吐いても店の心配をしていた祖父の大事な店を絶対に終わらせたくないと強く思い、当時は高校生でしたが、店長として店に出ることを決心しました」(穂乃花さん)
今ではメニューの企画や運営のすべてを穂乃花さんとジェンジェンさんが考え、社員全員と相談しながら提供しているという。