“会社は簡単に社員をクビにすることはできない”というが、「まったく仕事をしない社員」の場合はどうなのだろうか。クビにすることはできるのか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
同じ部署で働くAさんは上司の言うことをまったく聞かず、仕事を頼んでも「それをやる意味がわからないので受けられません」などと言って、仕事をしてくれません。会社も困っているのですが、「昨今は下手に社員を解雇できない」と及び腰です。
私には何の権限もありませんが、Aさんのように会社の言うことを聞かない社員を会社は解雇することはできないものでしょうか。(千葉県・42才・会社員)
【回答】
「言うことをまったく聞かない」というのが「一切指示に従って働かない」ということであれば、出社しても仕事をしていないことになります。
雇用契約で約束された内容と異なる職務を命じられた場合を除いて、Aさんは労務提供という契約上の債務を履行していないので、会社は契約解除できます。
実態を察するに、「仕事はしているが、上司の個々の作業指示に反論し、上司もそのまま反論を受け入れ、指示した作業をしない状況を黙認している」のだと思います。
本来、上司は指揮命令権があるので、Aさんに命じた職務をするよう指示することができ、違反すればAさんは職務命令への不服従として懲戒処分の対象になります。就業規則では、職務命令に従わなかった場合に受ける懲戒処分の種類や懲戒手続きに関する規定があると思いますので確認してください。