ビジネスをしていると、数々の「謎慣習」に出くわすことが多い。「はたしてこれは本当に意味があるのか……」と思いつつも、「まぁ、そのようになっているからその流れに合わせるか」となり、その慣習は維持され続ける。そろそろ、おかしいものにはおかしいと声を上げてもよいのでは? 社会人歴26年目を迎えたネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、過去から綿々と受け継がれてきた&新たに登場してきたビジネス上の「謎慣習」について指摘する。
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働く人たちにとって、合理的とは思えない「謎慣習」は、次々と増えていくから厄介なんですよ。時々消えていくものもありますが、それは大抵“お上主導”のもの。たとえば小池百合子都知事が環境相時代に「クールビズ」を提唱し、夏場のビジネスマンのスーツ・ネクタイの“着用義務”がなくなりました。
正直、私が会社員になった1997年、暑い夏でも営業マンはスーツにネクタイ姿で汗を流していました。外を歩く時はネクタイの襟元を弛め、取引先のビルに入ったら再び締める、なんてことをしていたのです。だから、小池氏の「クールビズ」は「英断だ!」と当時は思いました。謎慣習を撤廃に持ち込むには、誰かトップダウンの指令が必要なのでしょう。
今は夏場にネクタイをしていなくても失礼、ということはなくなりましたが、謎慣習は私が社会人になった25年前と比べてもあまり変わっていないどころか、むしろ増えているように感じられます。こうしたものは、「これ無駄じゃないですか?」と職場を含めて問題提起しない限り終わらないものではないでしょうか。
以下、私が無駄だと感じるものの例をいくつか挙げてみましょう。
【名刺を立場の低い人が下に出す】
これ、私が若い頃はあまりなかったのですが、2010年代以降、傾向が強まっているような気がしています。名刺なんて「どーも!」なんて言いながらチャッチャッと交換してしまえばいいのに、A氏が下に出したら相手のB氏がさらに下に出し、A氏がさらに下に出し「そろそろ交換しましょうか(苦笑)」みたいになります。恐らく互いに「この人の方が私よりも立場が上だろうな」と勝手に牽制しあうほか、遠慮し合ってこのような馬鹿みたいな数秒間のロスになるのでしょう。これ、誰が決めたマナーなんですか?
【オンライン会議で、下っ端ほど先に入り、後で退出】
これもまったく意味が分かりません。一時期、オンライン会議でも「上座・下座がある」といった謎ルールが登場しましたが、「入る・出る」にまでこの謎の忖度が存在します。場を仕切る人が「今日はありがとうございました」と言ったところで、退出すればいいのに、エラい人が退出するまで待つ若者が多すぎます。