“社畜”のアルバイト版として、いま若者のあいだで浸透している“バ畜”という言葉。学業を疎かにし、プライベートの時間までも削ってアルバイト漬けの日々を送る若者たちが長時間労働している状況に懸念を抱く声は少なくない。
「コロナ禍が明けて以降、学生の“バ畜”化が加速していると感じる」と語るのは、日々彼らに接している大学教員たちだ。
バイト掛け持ちで1限の必修科目に出られない
都内の、いわゆる“Fラン大学”に勤務する大学教員のAさん(50代・経営学部教授)はこう話す。
「コロナ禍が明けて以降、アルバイトのシフトを入れすぎたり、バイトを掛け持ちしたりして授業に出てこられないと話す学生が増えました。単位が取れないと相談を持ちかけてくる学生の大半が、『アルバイトで忙しくて授業に出てこられない』という理由を挙げています」(Aさん)
経営学部で教鞭を取るAさんは“バ畜”化する若者が増えてしまう社会状況について、どのように捉えているのか。
「いま、どの業界もアルバイト不足が顕在化しています。労働人口の減少による企業の人手不足が問題化するなか、かつては200万人いたフリーターも2022年の時点で132万に減少したというデータがあります(※総務省統計局「労働力調査」による)。
そうした背景から、企業は大学生を非常に使い勝手がよい存在とみなし、当初契約の条件以上に、アルバイトのシフトを増やすように強いる状況があるようです。学生側が“バ畜”になることを望んでいるだけでなく、なかには押しに弱い学生が、無理やり長時間労働を強要されている側面もあるのです。
私のゼミ生も、当初は週2日、1日5時間の条件で応募した飲食チェーンで、結局週5日、6~7時間働くよう求められています。学業と就職活動が疎かになると嘆いています」(Aさん)