「高額転売チケ買いたい」という“自己欺瞞”
別の中堅私立大学で勤務する教員のBさん(40代・文学部准教授)は、学生の「推し活」が“バ畜”化につながるひとつの要因になっているのではないか、と指摘する。
「学生たちと話していると、『夏休みはほぼフルでバイトをしていた』『ラーメン屋、居酒屋、ランジェリーショップの3つのアルバイトを掛け持ちしている』といった声を耳にします。こうした学業よりもアルバイトを優先させるような若者は、おそらく昔から存在したでしょう。しかし、今“バ畜”という言葉が注目されているように、学生たちが過度に長時間労働に駆り立てられる現状があるというのがポイントだと思います。
学生とこの話題について話をしたところ、聞こえてきたのが、お金を稼ぐ理由としての『推し活』でした。メジャーなアイドルだけでなく、なかには新大久保の小さなライブハウスで活動する韓国人の地下アイドルに貢ぐためにバイトしている、という女子学生もいました」(Bさん)
さらに問題含みの理由を挙げる学生もいるという。Bさんが続ける。
「とくに問題だと感じたのは、『男性アイドルの公演や舞台の全日程に入るために、高額の転売チケットを購入したいから』という女子学生の声でした。転売チケットを購入することが悪いことだという認識が彼女にはないのかもしれませんが、平気な顔で、堂々と大学の教員に話してしまうところに、推し活に全てを捧げてしまう危うさを感じました。
転売チケットの売買はいけないことだと指摘をすると、『パパ活や新大久保の立ちんぼをしている人よりはマシ』という返答が……。稼いだお金の使い道の是非ではなく、アルバイトを頑張って稼いだから正当化される、という自己欺瞞に陥っているようです。大学の授業に出ないでアルバイトに励むことを武勇伝のように語る学生もおり、“バ畜”という言葉がカジュアルに広まってしまうことを懸念しています」(同前)
厚生労働省は、1ヶ月の残業時間が80時間以上であることを過労死基準として定義している。長時間労働による慢性的な眠不足や疲労によるストレスは、心身ともにネガティブな影響を及ぼす。日々学生と接する大学教員たちも、“バ畜”化傾向に様々な懸念を感じているようだ。