こうして財務省キャリアは国税の現場を経験しながら、課長補佐時代にいくつかの局を経験して行政実務を積んでいく。
そして、選ばれたエリートが主流の主計局で予算編成を担う主計官となる。今度は政治家への“アメ”の与え方を身につけるのだ。
この時期には同期入省組のなかで一番手や二番手がはっきりして、幹部への登竜門である官房三課長(文書課長、秘書課長、総合政策課長)を経て、同期からほぼ1人が主計局次長(筆頭、次席、三席の3人)に就任し、次官コースに近づく。
「最近、次官コースになっているのが主計局次長から総理秘書官のケース。以前は、財務省から総理秘書官に派遣された官僚は官邸に残って内政審議室長(現在は内政担当の官房副長官補)などに就任することが多かった。それが前総理秘書官の宇波弘貴氏は本省に戻って官房長に就任し、次の次の次官が有力視されています。
ちなみに、宇波氏の後任となった現総理秘書官の一松旬氏は、主計官から“2段跳び”の異例の出世で、年次は若いが“将来の次官”といわれる出世頭です」(長谷川氏)
政治家へのアメとムチの振るい方を身につけた財務官僚の出世の最終段階は、省内の“事務局長”的役割の官房長から「主計局長」を経て次官に就任する。
予算編成権を握るこの主計局長は霞が関でも別格のポストだ。給料のランクは中小企業庁長官や文化庁長官と並ぶ次官級で全省庁の局長より1ランク高い。これは主計局長が予算折衝の際に各省の次官と交渉することから“同格”の扱いになったとされる。まさに予算編成権の威力である。
さらに見落とせないのが、政治家の介入に対する防御力だ。