タクシー業界の人手不足解消に向け、日本でも「ライドシェア」解禁の議論が進んでいる。ライドシェアが導入されて、一般人が自家用車を使い有償で客を乗せることができるようになると、事故や犯罪が増える可能性も指摘されているが、どのようなかたちが適しているのだろうか。経営コンサルタントの大前研一氏が「日本型ライドシェア」のあり方について提唱する。
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一般ドライバーが自家用車を使って有料で乗客を運ぶ「ライドシェア(相乗り)」の解禁に向けた議論が本格化している。岸田文雄首相が今国会の所信表明演説で「地域交通の担い手不足や移動の足の不足といった深刻な社会問題に対応しつつ、ライドシェアの課題に取り組む」と述べたからである。
その背景は、いま多くの業界で対応が急務となっている「2024年問題」だ。来年4月から自動車運転業務の時間外労働時間が年960時間に規制されるため、物流・運輸業界でトラックやバスなどの運転手不足が懸念されているのだ。
全国のタクシー会社の運転手は新型コロナ禍で2割減少した。国はようやく10月からタクシーの規制緩和を行なったが、その対象は過疎地だけである。
たとえば、人口30万人以上の都市部に限られていた個人タクシーの営業を過疎地などでも認め、新たに対象となる地域では運転手の年齢制限を75歳未満から80歳未満にするとか、1つの営業所に原則5台以上の車を保有する必要がある法人タクシーについては例外的に1台以上でも認める──といった内容なのだ。
しかし、年齢制限は設けず、定期的な適性検査で個別に判断すればよいと思う。法人タクシーも「1つの営業所に原則5台以上」などという意味不明な規制は、過疎地に限らず、全国でさっさと撤廃すべきである。