具体的には、現在の二種免許より試験の難易度を低くするとともに、カーナビや地図アプリの発達を踏まえ、都市部で二種免許の取得とは別に義務付けられている道路名や道順、施設の最寄り駅などを問う「地理試験」を廃止する(斉藤鉄夫国土交通相は廃止に向けた検討を進めると10月に表明)。
さらに私は、もう一歩進んで、二種免許を持っていなくても違反歴・事故歴がないドライバーについては、乗客を安全に運ぶために必要な運転技術や接客マナーなどをタクシー会社がきっちり訓練して管理することを条件に、営業車や自家用車でタクシー業務を行なえるようにすればよいと思う。
そうすればタクシー運転手のハードルが低くなって、女性や若者、そして会話能力など一定の条件を満たした外国人が参入してくるだろう。勤務日数・時間をフレックスにしたらサラリーマンが休日や夜間の副業にすることもできる。
実際、かつて私は九州で宅配スーパー「エブリデイ・ドット・コム」を経営していた時、近所の会社員や主婦に、空き時間を利用した副業として配達を手伝ってもらっていた。ライドシェアでも同じようなシステムを導入すれば、人手不足を解消しつつ、副業で稼げて、地域交通も補完する“三方よし”となる可能性もある。
タクシー運転手不足の解決には、そこまで思い切った規制緩和が必要なのだ。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『「老後不安」を乗り越える シニアエコノミー』など著書多数。
※週刊ポスト2023年12月1日号