気になるのは【1】の点です。同棲が、結婚する意思がありながら、婚姻届を提出しないまま、夫婦として共同生活を送り、周囲から夫婦と認められていれば、事実上の夫婦であり内縁関係にあると評価されます。その場合、相続を除いて、婚姻届を提出した正式な夫婦と同様の法的関係にあると考えられます。
夫婦は同居し、互いに協力し扶助する義務があるので、娘さんが一方的に家を出て、内縁関係を破綻させれば、同居義務に違反し、不法行為になります。その場合は、娘さんに同棲解消の正当な理由が必要です。性格の不一致だけでは、正当な理由にはならないように思われ、慰謝料支払い義務が認められる可能性があります。その場合は家具等の代金の半額との調整になります。
しかし、2年間の同棲が夫婦として家庭を形成することを予定せず、束縛がない自由で便宜的な共同生活を目的としていたものとすれば、同居義務などの夫婦間の義務はなく、いつでも共同生活を解消できるので慰謝料支払い義務はありません。
娘さんと彼が同棲を始めたときの約束や共同生活の実態などから、同棲の実態を判断することが必要です。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2023年11月30日・12月7日号