高校卒業後の進路は専門学校、大学、就職といったケースが多いが、フリーターという道もある。かつては「理想の生き方」「好きな時に働き好きな仕事をする」などと持て囃されたが、昨今は「専門性がつかない」などと否定的に見られることもある。そうした中でフリーター生活に焦りを感じている若者もいるようだ。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏(50)が、そんな若者と実際に話をしたうえで感じたことをレポートする
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先日、フリーター男性・A氏(19)とじっくり話す機会があったのですが、彼は「少し寂しい」と言っていました。というのも、専門学校や大学に進学した高校時代の同級生は新天地で新たなる人間関係を築いている様子をSNSで公開しているからです。
「僕にはそれがないです。バイト先ではあくまでもバイトとしての役割が求められるわけで、人間関係を作ることなどできません。そんな時、『進学しておけば良かったかも』と思うことはあります」
A氏がフリーターになったのは、いずれワーキングホリデーの制度を使い、海外で仕事をしたいと考えているから。現在はそのための資金作りとしてバイトしていると言います。なおA氏は、父母ともに事業を立ち上げており、実家は堅実な状況にあります。目標があるのだから十分ではないかと指摘しても「それでも人間関係のハブとなるような組織が僕にはないです……」と嘆息しました。
いずれ「進学しないで良かった」と思えるように
そこに割って入ってきたのが、飲食店経営者の男性・B氏(47)です。
「いやいや、いいじゃないですか。私も高校卒業後は似たような感じでしたが、あれから約30年経って良い感じになっていますよ。Aさんは実家も太いし、見た目もいいし、こうして親世代のオッサン2人とキチンとコミュニケーションを取れている。うまくいく未来しか見えませんよ」
現在A氏は、米軍基地でバイトをしており、英語を日常的に使う環境にいます。その点も含め、“将来への道筋が見えている”とB氏は感じたようです。
B氏は高校卒業後まず飲食店でバイトを始め、調理師免許を取ったのち、別の店に社員として採用されキッチンを担当。その後、大手ホテルチェーンに入社して料理人としての腕を磨きました。そして30歳で独立し、現在は飲食店のオーナーシェフとなっており、商売も繁盛しています。B氏はこう続けました。
「今は同級生の様子がキラキラしているように見えるかもしれないけど、大学のサークルで楽しそうにしている様子とかって将来的にはそこまで役に立つものではないでしょう。いずれ『自分は進学しないで良かった』と思えるようになればいいのでは。
私自身は色々な店を転々として修業しましたが、それがあって今、こうやって事業ができている。多分Aさんもそうなるような気はします。あと私もそうですが、実家が『太い』と安心感があって、自由に冒険もできる。失敗してもセーフティネットがあると考えると、博打を打つこともできるんですよ」
これを聞いてA氏は「そうですか、良かったです」とようやく少し笑顔を見せて、「とにかく早くお金を貯めて海外に行きたいです」と言いました。