年金受け取りにすると、年金資産を長く運用してもらえます。通常、年金資産は預金金利よりも高い利率で運用され、1~3%程度もめずらしくないので、年金資産が少し増えるというメリットもあります。ただし、自分自身で運用する企業型確定拠出年金(企業型DC)やiDeCoの場合は、株価が下がるなど市場環境が悪化すると資産が減ることもあり得ます。その場合でもiDeCoは75歳まで運用を続けられるので、株式市場の回復を待つこともできます。ただし、運用を続けてiDeCoの受け取りを遅らせると、その間は手数料がかかり続けるため、その額を確認しておきましょう。
退職所得控除と公的年金等控除は、企業年金による退職金制度(企業型確定拠出年金、確定給付年金など)のほか、企業年金を利用しない退職一時金や公的年金、iDeCoもすべて対象になります。複数の年金の受け取りを予定している場合は、退職所得控除と公的年金等控除を組み合わせることに加え、市場環境に目を配ったり、年金の繰り下げも検討するといった戦略も重要になります。
また、一時金で受け取る時期をずらせる場合は、iDeCoと企業型DCを60歳で受け取って、5年経ってからそれ以外の一時金を受け取ると、退職所得控除をフルで2回使えるので覚えておきましょう。
【プロフィール】
森田悦子(もりた・えつこ)/日本FP協会認定AFP(ファイナンシャルプランナー)。石川県生まれ。金沢大学法学部を卒業後、地方新聞記者、編集プロダクションを経て独立。主な執筆分野は資産運用、年金、社会保障、金融経済、ビジネス。新聞、雑誌、ウェブメディアなどで取材記事やインタビュー、コラム、ルポルタージュを寄稿。共著に『NISA&つみたてNISAで何を買っていますか?』、『500円で入門 今からはじめる株投資』(以上、standards)など。
※『知っている人だけが得をする 定年前後のお金の選択』(青春出版社)より一部抜粋して再構成