いよいよ、団塊世代がすべて後期高齢者入りしようとしている。政府が進める「全世代型社会保障」は、膨張する高齢者の医療・介護費を現役世代が負担しきれなくなっていることが背景にある。そのため、高齢者にも負担増を求める制度改正が進められているが、高齢世帯の暮らしも決して楽ではない。それどころか、これから高齢者になっていく世代も、今以上に生活が厳しくなると予想されるというのだ。少子高齢化問題に詳しいジャーナリストの河合雅司氏が解説する。【前後編の後編。前編から読む】
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公的年金が収入の主柱である高齢者は、支出が増えたからと言って簡単に所得を増やせるわけではない。
働く高齢者は珍しくなくなったが、現役時代のような水準の所得を得られる人は稀だ。岸田文雄首相は「インフレ率を超える賃上げの実現」を訴えているが、週に数日働いて年金収入の足しにしている高齢労働者の懐がそう簡単に潤うわけではないだろう。
「老後資金2000万円問題」が大きな話題を呼んだことでも分かるように「公的年金だけでは暮らしていけない」という人が大多数である。勤労所得を増やすことが難しく、年金受給額はインフレ率を下回るように調整されるダブルパンチだけでも大変なのに、全世代型社会保障改革によって医療や介護の高齢者負担増が加わったのではトリプルパンチとなる。現在のような急速な物価高に見舞われる局面においては生活に支障が生じる人も出てこよう。