貧困に苦しむ“将来の高齢者”をどう支援するか
全世代型社会保障が一筋縄で行かない理由は他にもある。これから高齢者になる就職氷河期世代は、現在の高齢者より老後生活が厳しくなると見られていることだ。
厚生労働白書によれば、2019年時点における35~44歳人口約1637万人のうち36.3%が無年金・低年金の予備軍だという。これらより少し上の世代も、長引く日本経済の低迷の影響でリストラされたり、勤務先が倒産したりして非正規雇用者となった人は少なくない。
高齢者に負担増を求めるどころか、貧困に苦しむ“将来の高齢者”をどう支援し、その財源をどう確保するかということが「2040年問題」の主テーマなのである。
そうでなくとも、少子高齢化や人口減少の加速に伴って新たな財源を必要とする社会保障上の課題が登場してきている。速すぎる出生数減を踏まえれば、子育て支援策はさらに手厚くせざるを得ないだろう。慢性的な人手不足や低所得者支援などにも多くの予算が必要となる見通しだ。
現役世代への過度な「しわ寄せ」は是正すべきではある。だが、それを高齢者の負担増で行うことには無理がある。
どの年齢層もゆとりのある人は多くはないのに、その中で世代間の負担の押し付け合いをしても根本解決にはつながらない。全世代型社会保障というのは最初から「計算の合わない話」であり、幻想なのである。
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