受け取り方で20万円の差
3つ目がiDeCoを受け取る際の税制優遇だ。iDeCoで運用した資金は「一時金」として一括で受け取るか、「年金」として10年間などに分けるか、あるいは「一時金と年金の併給」という3つの選択肢がある。
山本氏は「一時金として受け取るのが圧倒的に有利です」と言う。
一時金での受け取りで適用される「退職所得控除」は、勤続20年以下なら「40万円×勤続年数」、同20年超なら「800万円+70万円×(勤続年数-20)」で計算される。
それを踏まえ、60歳で会社の退職金を受け取り、65歳でiDeCoの一時金を受け取るという選択にすると、退職所得控除による節税メリットを最大化できるのだという。
「勤続30年で60歳時の退職金が1500万円とすると、退職所得控除の枠に収まるので、まるまる非課税になります。その後、65歳でiDeCoの一時金を受け取ると、退職所得控除額は勤続5年として計算されて200万円。iDeCoが月2万円、年率3%で運用されていたら元本と運用益を合わせて275万円なので、差し引き75万円の半分の37万5000円が課税所得となる。所得税1万8700円、住民税3万7500円の計5万6200円が課税されることになります」
一方、iDeCoを年金で受け取ると「公的年金等控除」が適用されるが、65歳以降は公的年金の受給が始まり、控除前の年金額が大きくなってしまうため、節税メリットが小さくなるのだ。
「公的年金を65歳から月20万円、前述の条件のiDeCoを65歳から10年分割の年金で受け取る場合、公的年金等控除が適用されても所得税と住民税合わせて約26万円の税金がかかる。一時金で受け取ったほうが20万円以上得する計算です。よほど高額な退職金を受け取る人でなければ、同じ結論になります」
3つの節税メリットの試算を足し合わせると、約70万円得することになる(図参照)。
iDeCoは若い人がコツコツ積み立てて年金を増やすためのものと思われがちだが、50代以降で始めても大きな節税効果が得られるのだ。
※週刊ポスト2023年12月15日号