相続をめぐる制度の大改正が迫っている。年110万円の贈与税の非課税枠(基礎控除)を活用して、将来の遺産額を減らしていく「暦年贈与」は、相続税対策としてメジャーな手法だったが、2024年から課税強化が進められる。そうした動きに対抗しようと、様々な相続税対策が講じられているが、計算通りにいくかは注意が必要だ。
現行制度では、被相続人がなくなる前の3年以内の暦年贈与については、相続財産に含めて計算するという「3年持ち戻し」のルールがある。亡くなる直前の相続税逃れの贈与に網を掛けるためのルールとされるが、これが2024年以降、段階的に「7年持ち戻し」へと延長されていく。暦年贈与を使った相続税対策の使い勝手が悪くなることは間違いなさそうだ。
ローンを組んではお墓を買うと控除されない
それゆえ、暦年贈与以外の相続税対策を考える人も増えている。たとえば、相続税が非課税となる「墓」などを親が生前に購入しておくことで、遺産額を圧縮する手法などが知られている。ただし、このやり方には注意点もあると、相続関連の著書が多い税理士法人レディングの木下勇人・税理士は言う。
「墓地、墓石、仏壇、仏具、神棚などは『祭祀財産』といって、相続税がかかりません。相続税対策で生前にお墓を購入しておくと、課税対象となる現金が減るため、節税になります。田舎に先祖代々の墓があるけど、自分の子の代では手入れできないだろうと考えて“墓じまい”をしたうえで、新しく都市部に墓地と墓石を購入したといったケースでも、相続税対策になるわけです。
ただし、これはあくまで祭祀財産が『現金』で購入されている場合に限られます。ローンを組んでお墓を購入した場合、その残高は控除されないのです。そこを勘違いして失敗するケースも少なくありません」