長い人生の「幸せな結末」を迎えるためには、そこに辿り着くまでの数々の選択を誤らないことが重要だ。
心身に不調が出やすい老後ほど、気軽に受診できるかかりつけの病院や医師の存在は大きい。患者の選択肢は幅広いように思えるが、例えば検査や入院のための設備が整う総合病院と、街中にある開業医ではどんな差があるのか。
上昌広医師(医療ガバナンス研究所理事長)は、大病院は「難しい治療」が必要な場合は頼もしいが、かかりつけには不都合な面もあると語る。
「まず大規模総合病院は待ち時間が長く、受診が1日がかりになることも多い。担当医を患者さんが選ぶことも基本的にできません。部長レベルの医師になるとほとんどがリピーターで、新規の場合は若手に任せるケースが多いと言えます」
さらに、専門に分かれた組織ゆえのデメリットもある。
「若い医師は自分の専門分野には詳しい一方、専門外についての知識や関心は乏しいのが実情です。大病院には『総合診療科』があるとはいえ、組織は基本的に縦割り。生活習慣病など複数の診療科をまたぐ疾患につながる病気の予防や治療には向いていないかもしれません」(同前)
いい開業医を見極めるポイント
その点、街の開業医は「家族ぐるみ」での密な付き合いが期待できる。上医師が続ける。
「開業医の多くは過去に病院での勤務経験がある人で、ベテランが多いと言えるでしょう。夫婦や家族などで通う場合は相談もしやすく、親切な対応が期待できます」
ただ、ここでも医師の技量の見極めは重要だ。
「開業歴が長い医師のなかには、新しい治療法や薬について勉強を怠っているケースもある。知識がアップデートされていないと、現在はほとんど使わない薬を処方したり、病気を見逃されるリスクも考えられます」(同前)
いい開業医を見極めるポイントは「人脈」があるかだと上医師は言う。
「いい開業医とは、近隣の医療リソースにアクセスできる医師です。手術や入院が必要になった時に、適切なところに紹介状をすぐ書いてくれるかどうか。患者さんの医療の窓口として、うまく利用すべき存在なのです」
それには「自分と相性のいい医師」を見つけることが肝心。合わないと思ったら、別の医師に切り替える決断も必要だ。
※週刊ポスト2024年1月1・5日号