2014年には「東京チカラめし」が大量閉店
新社長となった長澤氏が新たなテコ入れを図っている最中、恐るべき向かい風が襲来した。2020年、新型コロナウイルス感染症の流行だ。ここでも、サンコーが都心の繁華街をメインに出店していたことが仇となった。
「コロナ禍では、当初、都心の繁華街に足を踏み入れるのも後ろ指を指されるような状態でした。たとえ飲みに行くとしても、気のおけない仲間や家族と少人数で地元で……と考える方がほとんどだったのでしょう。私鉄沿線の住宅地付近にある地元密着型の飲食店は需要が高かったのですが、オフィスワーカーをメインターゲットにしていた都心部の飲食店は大打撃を受けました。
しかも『金の蔵』は都心繁華街の空中階(編注:ビルの2階以上のフロアのこと)の大箱店舗として展開していました。緊急事態宣言や“まん防”により満足に営業できないなか、店舗の賃料は免責されませんので、通常どおり支払わなくてはなりません。一番大変なときは、賃料含めた出費が月に5億円近くなりました。このままでは会社はつぶれてしまいますから、会社をいかに守るかという観点から、“これはもう『金の蔵』を閉店するしかない”と決断しました」
「金の蔵」を含めサンコーが展開する飲食店は、2019年には110店舗あったが、翌2020年6月には65店舗にまで減少。そして2023年12月現在、いまや「金の蔵」は池袋サンシャイン通り店の1店舗しか存在しない。
サンコーは日常食ブランドである「東京チカラめし」(2011年から2013年に130店を超える店舗展開)を2014年に大量閉店をしたことでも注目を集めてしまっていた。人気ブランドふたつの衰退を経て、長澤氏は、「拡大路線を転換した」と反省を述べる。
「まず出店ありきではなく、しっかりと人材育成をやってから出店する。この順番を守ろうと、私が社長に就任してからは、店を一気に増やすことはやめました」
今後、「金の蔵」は残る1店舗をブラッシュアップしながら営業継続していく予定だ。さらにブランドの知名度を生かして、EC向けの商品開発を進めているところだという。 堅実重視の新たな方針で、「金の蔵」が再び支持される日が来るのかもしれない。
(後編に続く)