同作は1991年末から1992年のお正月の2回にわたって放送された計8時間の大作。脚本・橋田壽賀子さん、プロデューサー・石井ふく子さんで『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)メンバーも数多く出演した異色作だった。
「面白かったのは紫式部のひとりごとです。29才で17才年上の夫に嫁ぎ、やっと妻になったと思ったら夫と死別。『虚しさのつれづれに書いております』とため息をつき、『学者の家に生まれ、地味な暮らしの中に……』と人生を振り返る。『ご催促が厳しいのです』と『源氏物語』の続きを所望する道長のことを嘆くシーンもあった。
歴史的にはあまり史料が残っていない女性ですが、知的かつ好奇心旺盛で宮中の恋愛模様を見聞きして物語を膨らませることができる、魅力あふれる女性だったことは間違いありません。『光る君へ』ではいつも軽やかな吉高さんがどんな紫式部を見せてくれるのかとても楽しみです」(ペリーさん)
作家として、男女の愛憎や宮中の権力争いの目撃者として、そして娘を持つ母であり、夫に先立たれた妻として平安の世を生きたひとりの女性、それが紫式部だ。
千年の時空を超えてよみがえった彼女の生き様から私たちが学べるものは──。
男手ひとつで育てられた教養あるお嬢さま
宮廷を舞台に、美貌と才能を兼ね備えた光源氏と女性たちのめくるめく恋愛模様が描かれる『源氏物語』は“日本一有名な小説”と言っても過言ではないだろう。しかし作者である紫式部の実名や正確な誕生年、没年は明らかになっていない。
近年の研究によると、紫式部が生まれたのは平安中期の973年頃。
父は学者で歌人の藤原為時で、母は幼少期に亡くなっている。幼い頃から漢文を得意とし、家にある歌集や物語を読みつくす読書好きの才女だったとされる。
「いまで言えば、都道府県知事のご令嬢といったところでしょうか」